Cacicaの店舗は靴工房を併設しており作業時の塵が出るため、どうしても頻繁に掃除をすることになります。しかも什器やディスプレイ用の古物等、こまごまとしたモノが多いので、なかなか大変。
そんな時に便利なのが箒です。
掃除機よりも小回りが効くので、使い勝手が良いのです。
春先に、いままで使っていた箒を買い替えることにしましたが、購入先に問い合わせると今までの箒を製作していた職人さんが箒作りをやめてしまったとのこと。
困った末、都内で開催されていたイベントにて箒を一本購入したのでした。
帰ってから、その箒で早速床を掃いたのですが、その履き心地の軽いこと!
箒それ自体は半手箒とはいえ大きさもありますので、持った時にはそれほど軽いとは思いませんでした。なのに、その箒で床を掃くと、不思議と軽さを感じるのです。
最小限の腕の動きだけで、床の塵がみるみるまとまっていきます。
それが、横畠梨絵さんの箒との出会いでした。
今回、Cacicaでお取り扱いさせていただくことになりましたので、ご紹介させていただきます。
横畠さんのこと
横畠さんは現在、茨城県を拠点に「綯屋」(ないや)という屋号を掲げ、草にまつわる手仕事と向き合っています。
その主軸となるのが箒の製作ですが、横畠さんの箒製作はご自身で畑を耕し、箒の原料となるホウキモロコシの種を蒔くところから始まります。異なる特徴を持つ数種のホウキモロコシを無農薬で育て収穫し、より使い心地の良い箒を作り出せるよう、日々手を動かしています。
初回入荷の箒
綯屋では一般的な長柄箒から、卓上で使えるミニ箒まで色々と製作されていますが、初回となる今回はCacicaでも使用している半手箒と荒神帚をオーダーしました。
※各箒のサイズ等詳細は店頭及びオンラインストアでご確認いただければと思います。
半手箒
・半手箒
箒と聞いてまず思い浮かぶのが、柄の長さが人の背丈程の長柄箒かと思いますが、その半分くらい、腰くらいまでの長さのものを「短柄箒」や「手箒」と呼びます。
「半手箒」も同様のものを指しますが、この呼び方は茨城県の河合箒特有の呼び方とのことです。
持ち手と糸の色の組み合わせも色々ありますが、今回入荷分は「白竹×梅枝」と「黒竹×インド茜」の組み合わせ。ちなみに、糸も横畠さんご自身で染められています。梅枝は薄いベージュ、インド茜は淡いピンクの糸になります。
「黒竹×インド茜」を手に持ったところ。(モデル身長は約157cmです)
穂先の幅は、やや広め。床の塵や埃を面で掃くことができます。
・細半手
こちらは通常の半手箒よりも穂先の幅が狭い「細半手」。
半手箒にボリュームを感じてしまう方はこちらをお選びいただくと良いかと思います。
組み合わせは「白竹×南天」と、「白竹×インド茜」の2本が入荷しています。
南天の色味は薄いグレー。梅枝との違いはちょっと分かりにくいかもしれません。
「白竹×南天」を手に持ったところ。
穂先の幅が少し狭く、柄の長さも半手箒より少し短めです。
荒神箒
もともと、竈の煤を払う用途で作られた小さめの箒で、その名は台所の神様「荒神様」からとられています。
現代では台所で使うことは少ないかもしれませんが、色々と小回りが効いて便利です。
平型と筒型の2種類の形があります。
・荒神箒 筒型
筒状の形。
糸の色味は南天です。
手に持ったところ。
ハタキのように細かい所の埃を払うのに便利です。
・荒神箒 平型
※こちらは入荷してすぐにお買い上げいただいたため、写真を撮る間もなく在庫切れとなってしまいました。
次回入荷の際に、改めてご案内させていただきます。
掃くことで整う生活のリズム
綯屋の箒の魅力は、履き心地の良さだけではありません。
手仕事により端正な形に整えられた箒は、今までの和箒の印象とは少し違うように感じます。
現代の住環境に適した形への進化を感じさせる控えめな造形。
日々の暮らしに溶け込むような落ち着いた色の組み合わせ。
それらは、横畠さんが伝統的な技法を継承しつつも、現代的な感覚で箒製作に向き合っているからこそ生まれるものなのでしょう。
実は横畠さんとはまだ直接お会いできていないので、掃き心地の軽さの秘密を、いつかお会いした時に聞いてみたいと思っています。
綯屋の箒を使い始めて数ヶ月。
床を掃く時の音や感触が気持ち良いので、以前よりもこまめに床を掃くようになりました。
仕事を始める前、靴作りの作業の合間、そして仕事の終わりに。
日々の営みの一つひとつに句読点を打っていくように、慌ただしかった生活のリズムが少しずつ整っていくのを感じます。
明日の朝もまた、床を履くところから仕事が始まります。
▽ こちらの記事もおすすめです