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たくさんの声から導き出された形 -Cacicaのベビーシューズ-

ここのところ、遠方からのオーダーも含め、立て続けにベビーシューズを製作しています。多くの方の手に、そして小さな足に届いていることを思うと、とても嬉しいです。

そんなCacicaのベビーシューズも、最初からこの形ではありませんでした。
機会がある度に小さなお子さんを持つお母さんたちの声を聴き、実際に履かせてみてもらい、その結果、導き出された形なのです。

今回は、ベビーシューズの各部分の工夫に焦点をあててみたいと思います。

履かせやすいこと

ベビーシューズに対する要望として真っ先に挙がったのは、「履かせやすさ」でした。
歩き始めの小さな子は動き回ってしまい、おとなしく靴を履いてくれないという声が多かったので、その要望に応えるため、2つの点を工夫しました。

しっかりした後足部

まずは踵の部分がしっかりと自立していること。
手作りのベビーシューズは、シンプルな構造になっているものが多く、Cacicaで当初作っていたものも、裏革(ライニング)のない簡易的な構造で、極端に柔らかいものでした。

以前作っていたベビーシューズの踵部分。
柔らかい構造は作りやすさや足あたりという点では良いのですが、特に踵の部分が柔らかいと足を支えられませんし、何より履かせにくくなってしまうのです。

そこで、後足部には裏革をつけることにし、踵部分には大人の靴と同じように、表革と裏革の間に芯を入れることにしました。

こんな形の芯が入っています。

3ミリ程の厚さの革を切り出して、周りを漉いて(薄くして)整え、成形します。

芯が入ると、見違えるようにしっかりします。
これが、ベビーシューズを履かせやすくする一つめの工夫です。

脱ぎ履きは面ファスナー付ストラップで

履かせやすさの点で次に変更したのは、足の固定の仕方です。

もともとは大人の靴と同じように靴紐を結んで足の甲を押さえる構造でしたが、こちらもじっとしてくれないお子さんの靴紐を結ぶのは大変という意見から、面ファスナー付きストラップに変更しました。

こちらは初期の型紙。
2対の紐穴があるのがわかります。

靴紐があった方が「靴らしさ」は出るので、意見が分かれるところでしたが、機能性を優先させることにしました。面ファスナーは大人の靴ではあまり使用しませんが、ボタンのようにピンポイントで固定するわけでもなく、靴紐のように結ばずに済み、しかも無段階調整という、ベビーシューズには理に適った方法だと思います。

ストラップ先端にはつまみやすくなるようにステッチが入っています。
かわいらしさと機能性、どちらも兼ねている仕様です。

足に優しく安全に

履かせやすさと同じくらいご要望の多かったのは、「足にやさしいこと」。
革靴というとどうしても硬くて足に当たるというイメージも持つ方も多いので、このようなご要望があるのも自然なこと。これから育っていくお子さんの足を傷つけてしまわないよう、以下の点で工夫しました。

当たりそうなところは柔らかく

足に当たりそうなところ、といってもそれは人によって色々です。
その中で多く挙がったのが、履き口とつま先でした。

履き口にはスポンジを入れることで、擦れや当たりを防いでいます。
昔の登山靴等で使われていた縫い方のチェーンステッチはアクセントに。

つま先はもともと裏革なしの一枚革だったので、当たる要素はありませんでしたが、履き始めに親御さんの不安を少しでも解消できるよう、立体的に癖付けすることにしました。

木型できちんと成形することで、ぷっくりとしたつま先になっています。
癖付けはいずれ元に戻ってしまいますが、その頃には靴が足に馴染んでいることと思います。

古くなったサンプルのつま先を指で押してみたところ。
一枚革なので柔らかく、足指の動きを妨げません。

その他、地面からの衝撃への不安の声も聞かれたので、中敷にもスポンジを入れることに。
履き口のものと性質の異なる、ややしっかりめのスポンジです。

このベビーシューズを履き終える頃、中敷には、小さな足の跡がつくはずです。
靴にできた皺や傷とともに、成長の記録として残るものがこんなところにも。

細かい所にも気を配っています

ソールはもともとの設計段階から滑らないようラバーソールにしていたので、特にご要望はありませんでしたが、コバ(ソールの縁取り)が広くて自分で踏んでしまいそうという声がありました。

靴には色々な製法(主に底付けの方法)があり、製法毎に特徴は異なります。
Cacicaのベビーシューズは屈曲性の良いステッチダウン製法で作っているので、コバが外側に張り出してしまうことはどうしても避けられません。

屈曲性はベビーシューズとしては譲れない部分だったため、他の製法に変更することはせず、コバを最小限まで削り、狭くすることで対処することにしました。

これからも小さな足元に

今回はベビーシューズの各部分の工夫について書いてみましたが、実際に書き始めると自然と文章量が多くなり、それだけたくさんの声をいただいていたことに気付かされました。
たくさんの声によって形作られたベビーシューズ。
これからもより多くの方の手に、小さな足に届くよう、より良いモノづくりをしていきたいと思います。


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