実用的な仕様です
Cacicaのスタンダードライン<ラバーソールパッケージ>とカジュアルラインでは、ラバーソールを採用しています。ダイナミックな造形や繊細な意匠ではレザーソールに劣るかもしれませんが、実用面ではこれに勝るものはないと考えているからです。ラバーソールパッケージのページにも書いてありますが、例えば駅の階段で滑らないことや、躊躇うことなく自転車を漕げること。そういった面では、日常生活でこそ真価を発揮する革靴と言えます。
つま先部分だけ革になっています
そんなラバーソールですが、Cacicaでは全面をラバーで覆うのではなく、つま先のみ革に切り替えた、言わば「コンビネーションラバーソール」を採用しています。
こちらは最近完成したカジュアルラインの靴。ソール面を見るとこんな風に、つま先のみ革になっているのが分かります。
拡大するとこんな感じです。境目の真鍮釘の役割は飾り半分、剥がれ防止半分といったところ。
横から見ると、境目で斜めに組み合わさっている様子が見てとれます。
既成靴でもたまに見かける仕様ではありますが、オーダーの靴でこのような作りにしているのは、あまり見たことがないので、どちらかと言えばマイナーな仕様なのかもしれません。既成靴ではブランド毎に名称がついていたりしますが、この仕様自体を指した正式な名称は聞かないので、「コンビネーションラバーソール」という名称も今、便宜的に付けたものです。
素材を組み合わせる利点
では、コンビネーションラバーソールを採用しているのはなぜなのか?
一つには修理のし易さが挙げられます。
新品でおろしたての靴は、返り(屈曲のクセ)がまだついていないため、つま先部分が地面に擦れて、削れやすくなっています。また、歩き方の癖によっては、履きなれた靴でもつま先ばかりが削れることも。
そのあたりは靴との相性もありますが、思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、つま先の部分補修が必要になるのですが、ラバーソール、特にCacicaで使っている軟質のものは、その素材の特性上、部分修理がしにくいのです。そのため、つま先の部分だけ別のパーツにしておいて、削れたらそこだけ替えられるようにしているというわけです。
もうひとつの理由、こちらの方が重要なのですが、それは起毛性の床に対しての摩擦係数が低いこと。
つま先までラバーソールの場合、例えばカーペットのようなフカフカした床では、ゴムの滑りにくさが効きすぎてしまいます。一番具体的に想定しているのは、ショッピングモール等の床ですが、そこに何かの加減でラバーのつま先が引っかかると、大げさに躓くことになってしまうのです。
そのようなことを防ぐために、言い方を変えればつま先部分だけ、「滑りやすく」しているのです。
つま先が滑りやすいというと、歩いている最中、蹴り出しのときに滑らないのか疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは足のサイズ毎に最適な大きさ・位置で素材を組み合わせているため、歩く度に滑るというようなことはありませんので、どうぞご安心を。
普段、あまり目にする機会のない、靴のソール。
Cacicaの靴では以前からこのような仕様を取り入れています。
これからオーダーをご検討の方は、是非、工房でご覧ください。
今までオーダーされた方も、「そんな風になってたっけ?」と、一度ご確認いただければと思います。
もしかしたら、もうすぐ修理のタイミングかもしれませんよ。