- ブログ -

  • 2021.08.23

カジュアルラインって、こんな靴 その1

最近、立て続けにカジュアルラインへのお問い合わせをいただいており、良いタイミングだと思いましたので、今回はカジュアルラインについてご紹介させていただきます。

何から書こうか迷いましたが、なぜカジュアルラインを展開することになったかを知っていただくと、靴の特徴が把握しやすいと思いますので、まずはカジュアルラインができた経緯から書いてみましょう。

オーダーの靴は重い?

現在は(サイズ制限はいくらかありますが)、メンズ・レディース共に展開しているカジュアルラインですが、もともとは女性向けに製作したラインでした。

Cacicaでのオーダー靴「スタンダードライン」は、ハンドソーンウェルテッド製法という製法で製作しています。製法としては様々な利点があり、その一つが繰り返しの修理に耐え、長い間履いていただけるというものなのですが、その分どうしても使用する資材が多くなり、重さが出てしまいます。

靴は手に持った時の重さと履いていただいた時の重さでは感じ方が違って、特に足に合った靴では軽く感じていただけるものなのですが、当時は展示受注会等で、どうしても「重い」という印象が先立ってしまい、特に女性からの受けが良くなかったのです。

そこで女性向けに「軽く」、「柔らかく」、「返り(屈曲性)が良い」靴が提案できないかと考えたのが、カジュアルラインでした。その性質をどのようにしてまとめれば良いか、素材や製法を一から見直していくところから、新しいラインの製作は始まりました。

軽くしなやかな靴のために

そんな経緯で展開することになったカジュアルライン。
その特徴を構成要素ごとに説明していきたいと思います。

製法

まずは製法。
製法は、返りの良いステッチダウン製法を採用しています。この製法は、アッパーの革を外側に開いてソール(Cacicaの場合はミッドソール)を縫いつけるというシンプルなもの。ハンドソーンウェルテッド製法では別パーツを縫いつけて、さらに段差を埋めるための資材も多くなるので、それに比べると軽量化にも貢献しています。

修理に関してもミッドソールからではなく、ラバーソール面からでしたら繰り返しの修理が可能です。

指差している部分が、アッパーを外側にめくってミッドソールを縫いつけてあるところです。
分かりにくいかもしれませんが、少し張り出している部分がアッパーとつながっていて、同素材となっています。

素材

足を包むアッパーは、しなやかで耐久性のある馬革と柔らかい豚革を組み合わせることにしました。
馬革といっても堅牢な繊維でできたコードバン(お尻)ではなく、背中~肩あたりの部位になります。この革については、革屋さんで一目惚れしたものがあったので、迷わずそれを使うことに。細かな傷がある革ですが、オイルの入ったその表情は、まさにカジュアルラインにピッタリだったのです。

ご覧のように細かな皺や傷があり、繊細な綺麗さとは離れた革ですが、経年変化で良い味になり、磨けば艶も出てくる良い革です。

豚革は、タンニンなめしで適度な厚みがあり弾力の感じられるものを採用しています。こちらは以前から使っていた革になりますが、なんといっても足あたりが良いのが特徴です。

こちらは修理で工房に帰ってきた靴。道具然とした表情で、良い育ち方です。

アッパーを縫う際のステッチも、履き込んだ後で良い経年変化をしていくようにピッチやステッチ幅等を決めています。各部分を拡大するとこんな感じ。
端が少し捲れたり広がったりしながらも、艶が出てきて魅力が増してきていると思います。

オーダーシステム

オーダーシステムについては、スタンダードラインでは木型から製作するオーダーを採っていますが、実際に足入れしていただいた方が履き心地を実感していただけるのではないかと考え、試着をしていただいた上でのサイズオーダーとしました。手作りの既成靴というような立ち位置ですが、これは、オーダーの靴をより身近に感じていただきたいと思ってのことでもあります。

木型

オーダー方法がサイズオーダーと決まると、サイズ毎の木型を展開する必要が出てきます。その際は、一つのサイズに対してスリム・ノーマルの2つの足囲を設けることにしました。若いお客さまの足が、年々細くなってきている傾向を考慮しての対応です。木型は、既成のものをベースにするのではなく、今までオーダーの靴製作で培ってきたデータと経験から導き出したものをベースに、サイズオーダーに適うよう調整したものを一から起こしています。

この木型の最大の特徴は、底面形状にあります。
既成靴の多くの木型底面が平面で構成されているのに対し、カジュアルラインの木型は実際の足の形から導き出した、やや立体的な形状をしています。人は足の裏が靴の中でぴったり沿っていると安心感を感じられるそうなのです。これも、今までのオーダーの靴製作に由来するもので、工場生産では作りにくい形状です。

既成靴ともいえるサイズオーダーの靴を、手作りで作る最大の意味はここにあります。
どんなに良い素材を使っていても、格好良くても、やはり靴は履き心地が良いというのが一番大切だと考えているからです。

靴の表情を決定するつま先の形は「カジュアル」ラインなのであまりスマートになり過ぎないように。それでも、ぽってりとした、いかにも手作りという雰囲気ではなく、都会的な、というか、誤解を恐れずに言うならばややプロダクト的な形を目指しています。
感じ方は人それぞれかと思いますが、いかがでしょうか。

モデル

現在、カジュアルラインは3モデルで展開しています。
モデルごとの工夫等は、もちろんありますが、各モデルで共通しているのは、パターンや型紙に熟慮を重ね、なるべく革に無駄が出ないようにしていること。資源の有効活用を考えてのことですが、それが価格を抑えることにもつながっているのです。

ちなみに、どうしても靴で使えない革の部位は、ポーチなどで利用しています。
ショップ実店舗やオンラインストアでも販売しておりますので、興味のある方は、是非ご覧ください。
カジュアルラインとお揃いの革モノをお持ちいただいて、それぞれの経年変化を味わうのも一つの楽しみかと思います。

長くなってしまいましたので、後半に続きます。


関連記事一覧

PAGE TOP