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TAPIR製品で基本の靴磨き 後編

さて、ひとつ前の記事「TAPIR製品で基本の靴磨き 前編」の続きです。
前回はレーダーオイルで汚れを落とす工程までご案内しましたので、今回はその続きからになります。
※前編は下記よりご覧いただけます。

TAPIRを使った靴磨き(クリーム塗布~仕上げ)

レーダーオイルで汚れを落とした靴は全体的に艶がなくなり、しっとりとしているはずです。
ここまでで磨く下地ができたことになりますので、次の工程に移ります。

クリーム塗布

用意するのは「レーダーフレーゲクリーム」と「ミニブラシ」です。

レーダーフレーゲクリームミニブラシ / TAPIR

レーダーフレーゲクリームは5色の色展開。
「無色」「黒」「焦げ茶」「赤茶」「青」がありますが、青は上級者向けなのでCacicaでは取り扱っていません。
無色ならどの色にでも使えるので、全ての靴を無色のクリームで磨くというのも選択肢の一つですが、革によっては経年で退色してしまうものもありますので、できれば靴の色に近い色を使っていただくと良いかと思います。

靴磨きに慣れている方はクリームを直接指に取って塗っていくこともあります。
体温によってクリームが柔らかくなり塗りやすいのと、革の状態を指でも確認しながら作業できるのが良いところですが、指も汚れてしまいますし、慣れていない方はミニブラシを使っていきましょう。

少量をブラシにつけて…、

目立たない土踏まずあたりからつけてみましょう。
TAPIRのクリームは顔料が少ないので、着色(補色)という点では他のメーカーのクリームに劣りますが、厚塗りになりにくいのがメリットでもあります。

靴磨きに慣れないうちは、どうしてもクリームを厚塗りにしてしまいがち。
多少の塗りすぎは後の工程のブラッシングと磨きで適度な状態になりますが、塗りすぎて靴にこってりと残ってしまったクリームは革が傷む原因にもなりますので、ご注意ください。

クリームにはワックス成分が含まれているので、塗布した後を指で撫でてみると、滑りにくくなっているというか、ほんの少し引っかかりを感じるはずです。全体がそれくらいの状態になれば良いと思います。

いつも負荷がかかっている履き皺も忘れずに。
この私の靴のようにヒビ割れてしまっている場合も、元に戻りませんが少しでも柔軟になるようにクリームを入れましょう。
クリームを押し込むように入れるのは良いのですが、良かれと思って多くつけすぎてしまうと返って硬化が進んでしまいますのでご注意ください。

余談ですが、TAPIRに限らずチューブ入りのクリームは、チューブの塗装が剥がれて靴についてしまうことがあります。
大きなものは払えば取れますが、小さなものがくっついてしまうとなかなか取れません。
そのような場合は、爪でこすると革に傷がついてしまうことがありますので、マスキングテープのような粘着力の弱いテープでくっつけて取ってみてください。

ブラッシング / 磨き

クリームを塗ったら、次はブラッシング。
使うのは「馬毛ブラシ」です。

艶出しブラシ 馬毛 / TAPIR

埃を払う工程でシュバルツ(黒毛)を使いましたが、今度はジルバー(薄茶の混毛)のものを使います。
前の投稿でも少し書きましたが、この工程では使ったクリームの色が分かると良いのでジルバーを使っています。
ブラシをいくつか持っているのでしたら、それぞれにクリームの色を割り当てて使い分けるのが良いと思いますが、ひとつしかお持ちでない場合でも、TAPIRのクリームは着色力が強くないので、使いまわしても問題ないかと思います。
ただ、埃落とし用と仕上げ用は分けていただいた方が良いかもしれません。

ブラシをしっかり握りこんで、強めにブラッシングしましょう。
一般的に磨きに使うブラシは豚毛のことが多いのですが、TAPIRでは豚毛ブラシの展開がなく、馬毛ブラシを「艶出しブラシ」に充てています。個人的には、硬さがある豚毛で繊細な革に負担がかかってしまうよりも良いと思っています。

埃を払う時やクリーム塗布の時と同じく、コバ周辺や履き皺もブラッシングします。

全体がブラッシングできたら、布でみがきましょう。
ブラッシングしても残ってしまっている余分なクリームを落とすのと、艶を出すのが目的です。
オイルでふき取ったときと同様に、くるくると小さな円を描くように磨いていってください。

磨いているうちに、艶が出てくるはずです。
ピカピカと光を反射するような強い輝きではなく、自然な光沢がTAPIRの特徴です。

磨き終わったら紐を通しましょう。
余裕があれば、靴磨きをしている間に靴紐も軽く手洗いすると、汚れやクセが取れてすっきりするのでおすすめです。

さて、これでTAPIRを使った基本の靴磨きは完了です。
おつかれさまでした。

最後に

靴作りでも靴磨きでも、作業工程の説明は文字にするとどうしても長くなってしまいます。
特に今回の記事では製品の特長も踏まえて詳しく書いたのでその工程の長さに戸惑ったかもしれませんが、実際は慣れてしまえば気軽にやっていただけるくらいの作業工程ではないかと思います。

靴磨きの工程を重ねている間に、靴の細部を色々と見ていただいているはずです。
思い出のある傷や構造上の新たな気付きなどもあったのではないでしょうか。
それらのひとつひとつが、また靴への愛着につながっていくのではないかと思います。
メンテナンスをしながら長く履けるのが、革靴の良いところ。
始めてしまえば楽しくなりますので、思い立ったときに是非、靴磨きにチャレンジしてみてください。

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