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4年振りの新作です -カジュアルライン ターンスリッパー-

一般的な靴のブランドでは、シーズン毎に新作を発表したり、今まで展開されていたモデルをアップデートしたりします。Cacicaはオーダーでの靴製作を主軸とする工房なので、シーズン毎の新作発表はせず、基本的なモデルをオーダーごとに製作する形をとっています。
新しいモデルは、お客さまの声や私たちの実体験を元に製作し、納得したタイミングでのみ展開するので、その数はあまり多くはありません。

今回はひさしぶりにカジュアルラインの新作ができましたので、ご案内させていただきます。
一つ前のモデル「エラスティック」を展開し始めたのが2020年なので、実に4年振りの新作となります。

心地よい時を過ごすために

さて、今回の新作「ターンスリッパー」は、私たちが旅行に行った際に、「こんな靴があったら良いな」と思ったものを形にしたモデルです。
旅行にでかけた時に、移動中や滞在先でちょっとした時間に履いていただくことを想定して製作しました。
例えば飛行機や新幹線の中で寛ぎたいとき。
またはホテルの周辺を散策するときや、ご自身の部屋からその他施設へ行くとき。
紐靴を履くのも良いけれど、もう少しリラックスした時間を過ごしたい。
そんな時に履くための靴です。
長時間歩くための靴ではないので、剛性よりも軽さを追求しています。

こちらが全体像。
低く抑えた前足部とダイナミックに立ち上がった後足部が組み合わさったアッパー。
そこに、薄めのソールがついています。

アッパーは曲線をつなぐことで上から見ても横からみても、流れが感じられるように意識して形作りました。
スリッポンタイプの靴の甲を覆う革の分量は、いつも悩むところ。
周りの人に意見を聞いたところ、履き口が深い方が足にフィットして良いという声もありましたし、履き口が浅い方がお洒落という声もありました。
個人的な好みというのもありますが、今回は「旅先で履くこと=リラックスできつつも、人前に出ること」を考えて、フィットしつつもだらしなく見えないようなバランスにまとめてみました。

ターンスリッパーは楽に持ち運びできるよう、つま先にも踵にも芯が入っていません。
芯が入っていないと踵部分はずり落ちてしまうことが多いので、普段製作している靴よりも履き口を高めに設定しました。
特徴的な形の後足部は奇を衒ったわけではなく、革が足をやさしく包めるよう機能面も考慮した形。
ピョンと跳ね上がったような後端部は、靴を履く際に引っ張ることができるので便利です。

こちらがソール。軽さを最優先させているため、ラバー部分は最小限にしました。

納品時にはコットンバッグをお付けしますので、そのまま旅先までお持ちいただけます。

靴を入れてベルトをくるりと巻くとこんな感じになります。

「スリッパ」という単語に首をかしげる方も多いかもしれませんが、一般的に想像する「スリッポン」とは少し違うという意味を含ませたくて、このような名前にしました。

こんな風に作ります

製法は構成パーツが少なく、柔らかい履き心地が特徴の「ターン製法」を採用しています。
革靴に詳しい方でもあまり聞き馴染みがないかもしれませんが、ターン製法とは、バレエシューズ等で用いられる靴の作り方で、アッパーを裏返して釣り込むという、変わった製法です。

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ソールになる革を底面に固定した木型に、アッパーを裏返しにして釣り込みます。
通常この工程で靴に入れるつま先の芯も踵の芯も、今回は入れません。

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スクイ縫いの要領で、アッパーとソールを横方向に縫い付けていきます。

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一周縫い終わって、余分な革を切りそろえて平らに整えたところ。

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横から見ると、こんな感じです。

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縫い付けたアッパーをひっくり返すと、今まで中に入っていたソールの革が表に出てきます。
この革は一般的な靴では中底として、足が乗る部分の革になるものです。
通常の靴ではこの中底とソールの2枚の革が足の下にあるのに対し、ターン製法ではこの一枚の革が中底とソールを兼ねた作りになっており、それがこの靴の軽さ・柔らかさにつながっています。

その後、ソール接地面のラバーを貼り、ヒールを付け、仕上げに進みます。
ブログで工程の全てを説明するのは難しいので、かなり省略しましたが、なんとなく分かっていただけたでしょうか?

どうぞお見知りおきを

一度は止まったかに思えた円安の進行は再度進む形になっていますが、数年前に比べると国内・海外問わず、旅行にも行きやすくなってきたのではないかと思います。
久しぶりの旅のお供に、選んでいただけたら嬉しいです。

※カジュアルラインは1つのサイズで足囲「ノーマル」「スリム」の木型の展開がありますが、こちらのターンスリッパーは製法上の制限から、足囲は「ノーマル」のみで、足の細い方は中敷の厚さを調整して対応させていただきます。

※革は今までのカジュアルラインと同様、馬革(黒・焦茶)になります。
ディアスキンはお選びいただけませんので、ご了承ください。


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